輝いているあの人に聞く目からウロコのストーリー

佐枝せつこの「ゲストルーム」

夢は叶う!「人生定年なし時代」を先取りしたエンジニア
第8回のゲスト
作家・鳴海風さん
  (4回連載/その3

長年、会社員をしながら小説を書き続けてこられた作家、鳴海風さん。2013年(鳴海さん曰く「正確には2014年3月末にグループ会社での再雇用延長を中止した。それで私は、2014年3月でデンソーを卒業と称している」)に定年退職をされてからは、執筆の他に講演やセミナー講師の依頼が殺到し、退職前より忙しい毎日を過ごしておられるようだ。

 

好きなことを仕事にできるのは誰もが羨む生き方だが、会社でのハードワークをこなしながら、小説を書き続けた鳴海風さんは日常生活で様々な工夫をしたという。「人生定年なし時代」を先取りする作家、鳴海風さんの魅力を4回に渡ってお伝えします。

その3
――落ち込んだときはどのように気分転換をされていますか?

 今自分は落ち込んでいるなあ、という経験はほとんどありません。スランプ状態でもアイデアが閃けば突破できると信じて、常に体を動かし続けます。こういった前向きの姿勢は、会社で仕込まれたことです。同僚にも前向きの考え方をする人は非常に多く、いつか私もそういった人種になってしまいました。

 何度も何度もピンチや修羅場を潜り抜けてきましたので、そういう場面に遭遇することは当たり前だ、いやむしろその場面が訪れたら、次は明るい場面が待っているのだと歓迎するくらいです。

 挑戦は生きて行く上の常識になっています。
 ただし、体調を崩しているときは無理です。そういうときは、一に休養、二に栄養、三に医者か薬に頼って、とにかく健康を取り戻すしかありません。

――歴史文学賞を受賞されたデビュー作、「円周率を計算した男」ですが、この題材を選ばれたのはなぜですか?

 プロデビューするために、私はあらゆる勉強を取り入れました。

 江戸時代の知識を得るために専門書をこつこつ買い続けました。元々古文と漢文は得意だったので、古文書の読み方や漢詩の講座を受けたりもしました。
小説の書き方講座にも当然通いました。

 最後にたどり着いたのが、『一本刀土俵入り』や『瞼の母』で有名な長谷川伸の衣鉢を継ぐ小説の勉強会「新鷹会(しんようかい)」でした。毎月15日に、平岩弓枝先生のご実家でもある東京の代々木八幡で開催されていましたので、何とか有休を取得して通いました。勉強会では自分の作品をプロ作家たちの前で読み上げますので、毎月必死に書いて持ち込みました。

 私は元々山本周五郎や藤沢周平が好きで、彼らのような時代小説を書きたいと思っていました。ところが、私がいくら水準を超える作品を書いて持って行っても、山本周五郎や藤沢周平と似た作品ではプロデビューできない、何かオリジナリティを発掘しなさいと言われたのです。

 私にとって、オリジナリティを探す旅が長く続きました。
その中で、偶然出会ったのが、江戸時代の数学である「和算(わさん)」でした。

 当時和算にのめり込んだ人たちの人間くささが、格好の小説のネタになったのです。しかも、和算を題材にした小説はきわめて少なかったのが幸いでした。

作家になるためにあらゆる勉強を取り入れたという鳴海さん、今までの人生の中では出会った人たちからもあらゆる影響を受けたという。鳴海さんが今までの人生で出会った方たちとのお話は次回お聞きします。(続きはコチラ↓)

鳴海風プロフィール
1953年 新潟県生まれ。愛知県美浜町在住
1980年 東北大学大学院機械工学専攻修了。

1980年 日本電装(現株式会社デンソー)入社。
1992年 「円周率を計算した男」で歴史文学賞を受賞
2006年 日本数学会出版賞受賞
2010年 愛知工業大学大学院で博士(経営情報科学)取得
2013年 名古屋商科大学大学院でMBA取得。デンソーを定年退社

著書  
「円周率を計算した男」新人物文庫 
「和算小説の楽しみ」岩波書店
「江戸の天才数学者」新潮選書
「星に惹かれた男たち」日本評論社 他多数

<Sairuma!(さいるま)とは>
日々の生活を彩る+末永くお届けできるようにとの願いと覚悟を込めて「彩る+ル・マン/24時間耐久レース」から「Sairuma!」と命名しました。