輝いているあの人に聞く目からウロコのストーリー

佐枝せつこの「ゲストルーム」

シームレス・ヴォイスのソプラノ歌手が
愛される理由

第7回のゲスト
手話とふれあう音楽劇「君の音が聞こえる」主演        ソプラノ歌手・盛かおるさん

手話とふれあう音楽劇、「君の音が聞こえる」(弥富又八作・演出・作曲)をご存知だろうか?

耳が不自由な女性と売れない作曲家が繰り広げる優しくて切なくて心があたたまる恋の物語だ。主役を演ずるのは弥富又八さんの妹で、ソプラノ歌手の盛かおるさん。劇中歌「君の音が聞こえる」で、愛する人を思う気持ちがどんどん高まり、感情を爆発させるような歌声で観客を魅了する。初めてその歌を聞いたときは鳥肌がたった。人の心を掴んで離さない圧倒的な歌唱力は、スペイン王立劇場の舞台でも高い評価を得ている。

ゲストルームでは、4月に名古屋と東京で5年ぶりに再演される「君の音が聞こえる」の稽古中の盛かおるさんに、歌への熱い想いをお聞きした。

――歌手になろうと思ったのはいつですか?
実は、自分が歌手になるなんて思っていませんでした。愛知県立芸術大学の声楽科を卒業はしているのですが、歌以外の成績のほうがよく、自分には歌手なんて無理だと思っていました。でも、何年も苦労して積み上げてきたものを簡単に終わらせてしまうのはあまりにも悔しくて、師匠が指導していた合唱団に所属して細々と歌っていたら、ある日急に「舞台に立ちたい」という欲が生まれまして。そこから新しい世界が開け、今に至ります。

 

――盛さんにとって歌とはどんな存在ですか?
子供の頃から自己表現が下手で、あまり自分に自信が持てなかったのですが、歌のお蔭で少しずつ自分を表現できるようになり、人との接し方も変わってきたように思います。歌が人とのご縁をつないでくれています。
結婚して、全く知り合いのいない静岡に引っ越した時も、歌のお蔭で多くの方とのご縁がつながりました。 

――オペラの舞台にも立たれていますが、オペラの魅力は何ですか?
オペラの台本は基本的に全て楽譜でできています。私たちの役割は、その楽譜から作曲家の意図を読み取り、歌って演じることなのですが、それがピタリとはまった、と感じる瞬間は最高に嬉しいです。注意深く楽譜を見ていくと、メロディーの中にも、オーケストラの音の中にも、演技のヒントがたくさんあります。練習の中で発見があったりすると、作曲家とつながった気がします。

 

――今までの人生で影響を受けた人、この人に出会ってよかったと思える方がいらしたら教えてください。
歌の師匠の神田詩朗先生です。大学に入る 際、間違っていた私の発声を根気よく直してくださり、正しい道に導いてくださいました。何年もかけて身に着けた発声のお蔭で、自分の声にきちんと向き合う ことができている実感があります。今でも成長し続けられるのは先生のおかげです。一生感謝し続けます。

もうひとりは明和高校音楽科時代の同級生で、ピアニストの川上ミネさんです。昨年のスペインのコンサートに私を引っ張って行ってくれたのは彼女です。来年秋、彼女を招いて私のリサイタルを名古屋で開催する予定です!

 

――劇作家・作曲家のお兄様のことをどう思いますか?
私は「楽譜」という、元々あるものから作曲家の意図を読み取って演奏する、ということを得意としていますが、兄は、何もないところから何かを生み出していきます。それも多方面にわたる、上質なものを。私には到底できないことをやり続けているその才能をとても尊敬します。

 

――落ち込んだり悲しいときはどのように気分転換をされていますか?
ヨガをします。深い呼吸をしながら色々なポーズをとっていると、頭や心の中にあるごちゃごちゃが次第に薄れていき、そのポーズに集中し始めます。終わった時には心も体もすっきりして、リセットできています。

――ヴォイストレーナーとしても活躍されていますが、歌がうまくなる秘訣はありますか?
一番大切なことは、ずばり「呼吸」です。日常生活の中で「深い呼吸」を意識することはほとんどないと思うのですが、実はこれがとても大切なことなんです。呼吸が上手な方は、歌も上手になりやすいと思います。

盛さんからのワンポイントアドバイス           
「呼」は息を吐く、「吸」は息を吸う、という意味なので、正しい呼吸をするためには、まずは吐くことから。深い呼吸を常に意識すると、精神も安定しますし、よく眠れますし、歌も上手くなりますよ。                    

盛さんの歌声は高音から低音まで継ぎ目がない「シームレス・ヴォイス」だ。
「自然」で「クリア」な歌声が大きな特長だが、人柄もまさに自然でクリア。美しい容姿と圧倒的な歌唱力をもちながら、盛かおるさんは自然体の女性なのだ。もっと前に出てもいいのにと、思わず背中を押したくなる。思わず手を貸したくなる。そんなふうに思う人が多いのだろう。

 2年前に名古屋で盛かおる後援会「レガーレ」が発足した。発足記念会にお邪魔をしたのだが、会場には静岡から駆けつけたという歌の生徒さんたちやお兄様ご家族などがいらして、とてもアットホームな雰囲気だった。印象的だったのは東京から来たという若い女性が、盛かおるさんへの心酔ぶりをとうとうと語ったことだ。小学校四年生の時に盛さんの歌を聴いてから自分も歌の道に進む決心をしたという。彼女の名前は古沢綾乃。当時、音大生だった古沢さんは、今はソプラノ歌手としての道を歩み始めている。

 盛さんの魅力はたくさんあるが、最大の魅力は応援してくれている素敵なファンの人たちがいることだ。ファンの人たちが盛さんをきらきら輝かせているようだ。

 そして、いよいよファン待望の音楽劇「君の音が聞こえる」が4月に再演される。「独身時代に観て感動しました。今は結婚して子育て中なので、また違った感覚で観られそうです。本当に大好きな作品です」「待ってました!必ず行きます。とてもいい作品なので、友人も誘います」など、過去の舞台を観た方たちの声を「とても有難いことです」と盛さんは言う。

「ろう者の方にも健聴者の方にもお楽しみいただけるように、字幕をつけています。弥富又八ワールド全開のやさしい世界を、たくさんの方に堪能していただきたいと思います」

劇場で盛かおるさんの歌声をぜひお聞きいただきたい。

■名古屋公演 
愛知県芸術劇場 小ホール
4月17日(金)  19:00
18日(土)  13:00、19:00
19日(日) 11:00 、16:00

■東京公演  

武蔵野芸能劇場
 4月25日(土) 14:00、 19:30
 26日(日)  13:00

盛かおる プロフィール
愛知県出身
愛知県立芸術大学音楽学部声楽専攻卒業
オペラやコンサート等の舞台活動を行うと共に、ヴォイストレーナーとしても活躍。名古屋では、セントラル愛知交響楽団のコントラバス奏者、榊原利修さん、チェコでご活躍されていたピアニストの榊原祐子さんと共に『トリオ・フローラ』として活動。静岡では、オーボエ奏者の御宿由美さん、ピアニストの角田直子さんと共に『トリオ・花音』として活動している。

<Sairuma!(さいるま)とは>
日々の生活を彩る+末永くお届けできるようにとの願いと覚悟を込めて「彩る+ル・マン/24時間耐久レース」から「Sairuma!」と命名しました。