輝いているあの人に聞く目からウロコのストーリー

佐枝せつこの「ゲストルーム」
 

第1回のゲスト 化学者・齋藤勝裕さん

 

齋藤先生との出会いは「放射能の基礎知識」というご講演を聞いたこと。講演記録をまとめさせて頂いたのがご縁で親しくさせて頂くようになったが、ご自宅に伺って驚いた。なぜ、神様はひとりの人にこれほどたくさんの才能を与えたのだろうか? 

 

多才すぎる化学者

メルヘンチックな少女のステンドグラスがはめ込まれたドアを開けると、玄関ホールにはボッティチェリの絵画を元にした彩木画(木を絵の具の代わりにして作る絵画)が現れる。お茶を頂いたテーブルはステンドグラス。脚は彫刻と彩木画で飾られている。書斎には彩木画でルネッサンス風に変身したプレーヤーケースにスピーカーが置かれ、チェロ、バイオリン、ビオラの楽器にまで彩木画が施されている。

 

「楽器の表面を浅く彫り、

         そこへ別の木を埋め込んで絵にします」 

                      と齋藤先生。

美術館のようなご自宅の作品はすべて齋藤先生お一人で制作されている。アトリエは食卓。家族の声がいつも聞こえる食卓で下絵を書いたり、彫刻刀を握っておられる。

 

圧倒されるような作品を拝見していると、つい化学者だということを忘れそうになるが、先日130冊目の本「ニュースがよくわかる生命科学超入門」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓されたばかり。専門分野は有機化学、物理化学、光化学、超分子化学。

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化学の道を選んだきっかけは?

――高校時代に出会った高名な化学者フィーザーの『有機化学』がきっかけですね。読んでいて面白そうなのでやってみようかと。当時から文系より理系でしたから。数学は得意でした。
 

ステンドグラスや彩木画との出会いは?

――36歳でアメリカから帰って、最初に始めたのは彩木画でした。技法を覚えるとすぐにボッティチェリの『ビーナスの誕生』を作りました。

まずまず満足の行くものができたと思いました。それまで憧れの対象でしかなかった物を自分で作ったのです。これで火が着いたようです。


同じように、昔からあこがれていたステンドグラスにチャレンジする勇気ときっかけができました。ステンドグラスは、ルオーの絵によって引き付けられました。黒くて太い輪郭のルオーの絵はステンドグラスです。ルオーのお父さんもステンドグラス職人だったかと思います。

 

彩木画とステンドグラスのコラボは自然のなりゆきです。美しいものが2つあったら、組み合わせようとしない方が不思議に思います。私の作品は木たち自身の作品でもあり、木の助けがなければできなかった作品ばかりです。

 

美しいものと美しいものを組み合わせる。美の競演は名演出家がいなければできない。なのに演出家は実に謙虚である。
 

「彩木画」という言葉は齋藤先生が提案されたとのこと。木が彩ってくれる画という意味が込められているそうだ。

 

研究と制作にかけるモチベーションは
どのように維持されるのか?

――私のやっている化学は山師的なプロジェクトで、ひとつくらい当たればいいという感覚で複数の研究を同時進行でやっているのです。研究に半年から一年を費やし、それで結局ダメだったら今まで一体なにをやっていたかということになります。もう一方で必ず結果がでるものを持っていれば、消沈した気持ちを結果が出るものに向けることで、自分で心のバランスを保つことができます。

 

イギリスの哲学者、ラッセルが著書「幸福論」で、人間は誰でも2本のものさしをもたなければダメだといっているんですね。こちらがダメでもこちらがあるというように、私は化学とは別のものを持っていることで心のバランスを保っています。趣味である園芸もそのひとつです。

 

落ち込んだときや悲しいときには
どのように気分転換を?

――嫌なことは考えないという習慣にしています。嫌なことは意識的に消しています。

 

今までの人生で出会った一番好きな曲は?

――モーツァルトの「レクイエムです。レクイエムを好きな曲と言うのは不遜かもしれませんが、音楽の世界には「別格の曲」としか言いようのない曲があります。私にとってはバッハの「無伴奏チェロ組曲」の5番もそのような曲の一つです。バッハの頃には、A弦(最高音)を半音下げて演奏したという難曲ですが、その深い響きは神の精神世界か?と思わせます。「これを弾けるようになったら死んでもいい!」と思ったのがチェロを始めたきっかっけでした。

素晴らしい音楽や芸術に触れたとき、多くの人は素晴らしいとただ感動をするが、齋藤先生はその感動をあこがれに変え、ご自身の手で表現したいと取り組まれる。並々ならぬ芸術への憧憬が先生の彩木画やステンドグラスを作られる原動力になっているのだろう。

 

最後に、憧れの女性は?

齋藤先生の作品はすべて女性が描かれている。彩木画の中で一番先生の好きな作品をお聞きしてみた。「これです」と示されたのは「バラの少女」という作品だった。ふと、誰かに似ている気がした。

私ではない。キッチンに立っておられる先生の奥様だった。

 

齋藤勝裕さんプロフィール

東北大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了。理学博士。

名古屋市立大学特任教授、愛知学院大学客員教授

金城学院大学客員教授、名古屋工業大学名誉教授

ステンドグラス工房「モロー」主宰、彩木画工房「ルネッサンス」主宰

中日文化センターで彩木画講師。

趣味はチェロ演奏、園芸など

 

最新著作 『ニュースがよくわかる生命科学超入門  』(ディスカヴァー携書)

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